神さま、これまで生きていてこんなにも人を殴りたいと思ったことはありません

バスに乗っていたら、学校の前で小学生がわーっと乗ってきた。
後ろに男の子ふたりが座ってて、大きな声で喋っていたのを聞くともなしに聞いていたんですが。
 
声変わりもしてない、下の毛も生えそろってなさそうな子がキンキン高い声でずっと文句を言ってる。
「親がさー、俺のお年玉全部郵便局に貯金しててさー、俺の金なのに自由に使えないんだよ!」
 
あー、はいはい、小さい頃ってそんなこともあるよね、とこの辺までは冷静に聞いていた。
 
「もう三十万は貯まってるんだぜ!? だから俺の好きに使わせろっつったら、『じゃあ携帯の料金自分で払え』って言うんだよ、信じらんねえ! 何で俺がそんなもん払わなくちゃいけないんだよ! 俺収入ないんだぜ、高校生でバイトしてるならわかるけど、小学六年で携帯の金自分で払うって聞いたことねえよ」
じゃあ携帯なんか持たなければいいんじゃねえか、と思うわけですよ。
「だから俺、勝手に銀行で別の口座に金移して、金なんか全部使ったから払えねえって言おうと思うんだ。払えないって言ったら親がどんな顔するか見てやりてえ」
この辺でわたくしもう殴りたい気持ち満々になっておりましたら、その小学生の隣にいる、多分同級生が口を開いた。こっちは声変わりも済み、結構落ち着いた感じの口調の子です。
大「でもまあ、結局払ってくれんじゃねえ? 親なんだから」
小「払うわけねーよ、うちのオヤジ貯金しか脳がないくせに、全然俺に使わないんだぜ。貯金しろしろって言うだけで」
大「ふーん(投げやりに半笑い)」
小「(笑ってもらえたのが嬉しいらしくテンションが上がる)休みの日なんか、一日家でごろごろするだけでろくに金も使わないの」
以後、父親への不平不満がぞろぞろと。
大「疲れてんだろ、働いてんだから」
わたしが殴りたい気持ちMAXになってきた頃、やっぱり半笑いになりつつ友だちがたしなめているのを聞いて、ちょっと落ち着く。
小「朝からずっとテレビ見てるだけなんだよ、日曜の十時に起きて、ソファでテレビ見て、夜までずっとそのまま。ありえねえ」
大「で、おまえは休みの日何してんの?」
小「……ゲームとか……」
大「(失笑)」
小「(慌てて)あと、勉強もしてる!」
大「勉強って、どんな?」
小「ドリルかなあ」
大「ドリルどんくらいやってんの?」
小「二ページくらい……」
大「(失笑)」
  
大きい方のおかげで殴らずに済んだ。世の中こんなアホばっかじゃダメになるわけだと思ったんですが、冷静にまともな切り返しができるような子もいるのでまだ捨てたもんじゃない。
でかける時にバスでこの会話を聞いて、帰りも同じ学校の生徒とバスに乗り合わせたんですけどね。
今度は中等部の男の子で、ペットボトルを振り回して大きい音を立てながら、大きい声で喋ってるので、うるせーなと思ってたら、隣にいたその友だちらしき子がいきなりその子の制服をがしっと掴んで、
 
「おまえな、この制服着てる時は(学校名)の看板しょってるってことなんだぞ。おまえのすることが学校全体の評価になるんだぞ」
 
とゆっくり低い声で諭し、騒いでた子が一瞬静かになったので、すげー感動しました。
諭してた方は、メガネ黒髪のまじめそうな子だった。
 
騒いでた子が静かになったのはほんと一瞬だけで、どうやらその『看板しょってる』という言葉を覚えたのが嬉しいらしくて、「看板、看板!」って大きい声で言い出した。メガネは何かもう「こいつしょーがねーなー…」って顔で諦めた笑みを浮かべていました。
 
アホの子たちは、いつか大人になった時に、そうやって諭してくれる友だちがいることがどんなに幸福なのか、気づいて欲しい。
その前に、おりこうの友だちに見捨てられないことを祈ります。

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