渡海奈穂の近況報告の歌

小説家・渡海奈穂の買った本とか日常のどうでもいい感じの記録、たまに宣伝。

近年では一番怖かった

 
わたしは中学生で、
 
割とあんまり周りの人となじめなくて、寂しい思いをしていたんだけど、学校へ行く途中お下げ髪のほっそりした、水色の制服を着た少女に話しかけられます。
彼女は「K」さんと言って(実在の人物なので伏せる…)、ずっとわたしが憧れていた方で、ずいぶん遠くに住んでいるから思い切って手紙を出したらお返事を下さって、調子に乗ってさらに返事を出したらまた返事が…みたいにやりとりをしていたんだけど、そのうち途切れてしまって、「わたし変なこと書いて困らせて嫌われたのかも…」とぐじぐじ悩んでいた相手でした。
Kちゃん(と夢の中では勝手に呼んでいた。お互い中学生だったので)は、実際目の当たりにするのは初めてなんだけど、本当に細くて白くて儚げなかわいらしい女の子で、わたしはやたらに胸を高鳴らせながらKちゃんを見返して、
「わたしは渡海ですけど、覚えていますか」
と訊ねました。Kちゃんは、もちろん、と少し笑って頷いて、学校へ向かう古い石段を並んで歩いてくれました。
Kちゃんとは、心の話をして、もともと好きだった彼女のことをもっと大好きになって、ずっと寂しかったわたしはとてもしあわせな心地になりました。
 
学校に着いていったんKちゃんと別れ、わたしはひとりでご不浄に行きました。本当に友だちがまったくいなかったので連れションでもなくひとりきりご不浄に向かい、個室に入って用を足していたわたしは、外の手洗いのところで鏡を見ながら髪を直しているKちゃんがいることに気付きました(夢ですから)。
わたしは何だかものすごく嬉しくなって、ああ、もうわたしにはこの世で一番大事な親友ができたんだなあ…とまた幸福をかみしめました。
と同時に、寂しかった自分がずっとかわいがっていた人形は、もういらないんだわ、と思い至りました。
友だちのいないわたしは、いくつかの人形を持っていて、彼女たちに話しかけて過ごしていたのです。
 
ずっとひとりでいたけれど、Kちゃんが一緒にいてくれるみたい
ずっとあなたたちと一緒だったけど、もう人形はいらないみたい
 
歌うようにわたしはそう思いました。
 
そうだ、その人形をKちゃんにも見せてあげよう、と思って、わたしは辺りに散らばっていた人形をひとつひとつ拾い上げます。
でもいくつもいくつも、十も二十もある人形を、わたしの腕二本では抱えきれず、ひとつ抱いてはひとつ落ちていきます。
床の上は、わたしが流した月のもので汚れていて、抱きしめきれなかった人形がつぎつぎそこに落ちていきます。
落ちた人形に混じって、ピンク色のおんぶひもがみつかったので、わたしはそれを拾い上げ、まとめておぶってしまおうと考えたんですが、どうやっても多すぎる人形はまとめきれず、どれかひとつ一番かわいい人形を選ばなくちゃ、ああ、面倒臭いなあ…と思った刹那、
 
いやよ、いやよ、いやよわたしを選んでくれなくちゃいや
 
とすべての人形が歌いながら起きあがり、わたしの体めがけて勢いよく飛びつくと、足となく手となく体となく締め付けるのでした。
 

 
で、
ものすごく嫌な汗をかいて目がさめました。
これ文章だと上手く説明できないなあ、とにかくぶわーっとたくさんの人形がわたしの体中にちいちゃい手でしがみついて来るのがものっそい恐ろしかったです。しかも全員子どもの声で大合唱してるのな!
しかし「いやよ、いやよ」のリズムがどう思い返してもキューティハニーなので、本気で怖がっていいのか笑っていいのかわからん。
わたしは人形がものすごく苦手なので、自分で集めたりはしてなかったんですが、唯一祖父が買ってくれた大きな人形があって、その人形がこの夢に出て来たのもすげー怖かった。実家で大事にされてるはずなので、心配いらないと思うんですが(何の?)
しかしこの夢だとわたし、本当にものすごく寂しい子みたいですね。友だちおらんのか。人形と会話してるて。暗すぎる。
Kさんのことはいつも思ってるわけじゃないけど、ときどき思い出して「に″ゃー!!」って気分になる。何つーか若い頃にお手紙を出した相手で、本当にいらんことを書きつづってしまってかなりしでかした感があるので、こう…ああ…。
夢の中でも、彼女を「Kちゃん」と呼べたのが嬉しいなあ、などと起きてから思う自分が心底気持ち悪いです。あんな女子中学生がいたら倖せだろうとか…ほっそりした骨の浮き出るような腕とか、折れそうな首筋とか、髪が細いから三つ編みが紐みたいになっちゃってる感じとか(わたしは注連縄でした)、もう理想! って感じでな。
 
水たまりに点々と散る赤の中に転がった人形よりも、ピンクのおんぶ紐がさらに怖かったよ。
「やっべー! なんかすげーやっべー!!」と思いながら目が覚めた。
あんまり怖かったので、三時過ぎに寝たのに五時前に目が覚めてもう寝付けません。怖さを紛らわすため好きサイトなどを回っていたら、立て続けにふたつ閉鎖しているのを発見してしまったのでものすごくへこんだ。へこんで怖いのがどっか行ってしまったのに、わざわざ日記にしたためて怖さを反芻しているのだからきっとわたしはマゾだ。
 
多分こういう夢が怖い根底にはモクメがあるんじゃないかなーと…
そげキングを見るとどうしてもモクメを思い出すので、週に一度はモクメのことを考えている。
 
……モクメ立体ストラップか……